営利法人と福祉
ここ数年、障がい福祉の分野で、取消処分を含む重たい行政処分を受ける株式会社等の営利法人が目立っているように思います。そういったニュースが報じられるとき、よく聞くコメントとして、
「あの運営会社は金儲けが目的としか思えない」
というのがありますが、私に言わせると、それは当たり前のことで、何も不思議なことではありません。株式会社、合同会社といった営利法人の究極の目的は「1円でも多くの利益を出すこと」です。それは法律上の仕組みなので、仕方のないことです。
対して、社会福祉法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、一般社団法人等は、非営利法人であり、利益よりも「活動」(福祉であれば福祉事業)が優先され、法人の種別によっては利益を貯め込むことが許されない(利益が貯まったら福祉で還元する必要あり)ほどです。
保育分野で言えば、社会福祉法人の経費の人件費比率(保育士さんたちのお給料)はおおむね7割くらいですが、株式会社は5割程度です。合法的に処理していても、このくらいの差が出るものです。
このように法人の存在目的が全く違うので、本来同列で語るべきではないのです。
福祉は元来、行政の責任で行うという考え方であり、行政(公立)だけでカバーできないため、民間に委託するようになった訳です。とはいえ、福祉事業は巨額の公金を扱うことになるため、当初は、社会福祉法人といった常時行政の厳しい監督を受ける法人に委託していた訳ですが、介護保険制度のスタートをきっかけに、福祉全体がサービス化され、民間に大きく開放されることになった訳です。
そして、株式会社等の営利企業が参入しやすいように、どんどん規制緩和を進めて、企業が儲けやすく(株式会社で言えば利益を出して株主に還元するという存在目的を達成しやすく)していったのは、国なのです。
もちろん、事件化するような、社会正義に反することは許されるべきではありませんし、それは非営利法人であっても同じことです。(社会福祉法人の金銭面の不正も残念ながら毎年報道されています。)
「金儲けをすること」は、営利法人にとっては悪でもなんでもなく、むしろ最優先の存在目的ですらあるので仕方のないことであり、その点を責めたいのであれば、営利法人を安易に参入させ、簡単に儲けさせる仕組みを作っている国(とは言っても究極的には立法機関の国会議員を選んだ自分たち)を責めるべきかと思います。
ちなみに、私の取引先は、9割は非営利法人ですが、一部営利法人もあります。そこの社長さんは、とても人間味があり、子どものことを熱心に考えていることが伝わります。児童福祉に寄与しながら、利益を出す素晴らしい社長さんも実際に知っているので、私個人としては営利法人を参入させることが誤りだとは思っていません。しかし、赤字を理由に突然閉園といったニュースを見聞きする度に、それが法的には間違っていなかったとしても、なんだかな…と思ってしまう時もあるものです。
特定行政書士 寺島朋弥
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