幼稚園と相続|認可申請

特定行政書士|寺島朋弥

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寺島行政書士事務所ブログ

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幼稚園と相続

昨今の認可保育園や介護事業等いわゆる補助金事業の常識をご存知の方からは意外に思われるのですが、私立幼稚園には個人事業主によって設置され、運営されているところがまだまだ存在します。(経緯は割愛しますが現在は個人による新規設置は不可能。)

幼稚園に限らずどんな個人事業でも共通ですが、その事業主が亡くなった時の対応が問題になります。財産云々の部分は相続ということになりますが、例えば従業員を雇用している場合の雇用契約関係、顧客との契約関係、行政から補助金を受けている場合のその権利関係等、権利主体である個人の死亡によってあらゆる法律関係がリセットされることになります。

特に公的な色の強い学校(幼稚園)の場合、相続というよりも設置者が変更されるという概念になるため、行政手続きの観点でも非常に面倒(書類の数で言えば新規設置に近い量の書類が必要)なことになるのです。私も年に1~2件は幼稚園と相続の相談をお受けしておりますが、複数の専門家が共同して取り掛かる一大プロジェクトになってしまうことも多々あります。

相続手続自体は私は専門ではないので基礎知識程度しかありませんが、相続だけでも場合によっては全国各地に住んでいる十人以上の相続人から実印や印鑑証明書をもらったり、家庭裁判所の手続きが絡んだりするケースもあり得るというのに、早急に行うべき幼稚園の設置者変更認可申請で何十枚、場合によっては100枚超えの申請書を準備するなんてとんでもない負担になることでしょう。

それらを少しでも軽減するためには、可能であれば事前に事業継承をしておくか、代表者のままでいたいのであれば学校法人を作っておくということになります。事業継承であれば、設置者変更認可の手続き自体はほとんど変わりありませんが(相続書類の添付がない程度)、相続と同時でない分、負担は軽減されることになります。

学校法人化は、正直なところ作る時の手続きは設置者変更の比ではなく非常に大変ですが、その後は恒久的に経営主体が変わらないことになるので(ご本人が亡くなっても理事長が変わるだけ。理事長変更の手続きは手数はあるけど簡単。また代表権者を同時に2名以上置くことも可能なので緩やかに引継ぎもできる。)、子孫のことを考えると十分検討に値すると思います。

幼稚園経営であれば公認会計士さんや税理士さんと並走していることと思いますが、行政手続きの観点で検討段階から一緒に相談に応じることも可能ですので、事業継承の準備をお考えの場合は、お気軽にご相談ください。

特定行政書士 寺島朋弥

2025年1月27日

R7.4開設案件の受付停止について

令和7年4月1日保育園開設の案件(小規模保育事業含む)は、現在受任上限に達しているため、新規の受付を停止しております。ただし、地域によっては他の事務所と共同することで進めることが可能な場合もございます。どうしても身近に保育のプロポーザル・認可申請に対応できる行政書士が見つからない場合は、まずはメールフォームを通してご相談ください。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年9月18日

認可保育園の新設案件の実情

ふと思い立ったので、認可保育園(保育所や地域型保育事業を総じてこの記事では「認可保育園」と言います。)の新設案件の行政手続きの実情について書いてみようと思います。

行政書士の王道業務は「許認可」であることは言うまでもなく、その「認可」という文字があるとおり、認可保育園の申請は行政書士業務と言えます。ところが、実際にこの業務を経験したことがある行政書士はとても少ないです。

HPなどでいろいろ解説してあるのを目にすることがありますが、経験者からすると「ん??」と思うような内容も多々あり、大手さんは別としてフルで携わった経験のある同業者はそれほど多くないのではと思っています。

計画から1年程度で完結する地域型保育事業(いわゆる小規模認可保育園=以後「小規模園」とします。)は経験したことがある同業者と話したことはありますが、2~3年かかる認可保育所(0~6歳まで100人くらい預かるような規模の認可保育園)をフルで経験したことがある人とは直接お会いしたことはありません。(大手事務所さんはチームで実際にこなしていると思います。)

それでは、この10年で無数の認可保育園が立ち上がりましたが、申請業務は誰が担っていたのでしょうか。

私のこれまでの経験からまとめると、認可外から小規模園単体を作ったという話であれば、経営者さんが自ら頑張って申請書類を作成し、行政手続きをされているケースが多いです。中には職員である保育士さんまで巻き込んで、夜中まで残業して書類作成をしたという話も実際に聞いたことがあります。

次に、小規模園を多数展開しているような株式会社さんの場合は、自社内に行政手続きの部署を設置し、人海戦術で行っているケースをいくつか見てきました。

最後に、大規模な施設整備(建設工事)が伴う案件の場合は、ほとんどは設計業者さんや、保育事業のコンサルタント会社が「サポート」しています。その場合、有料で書類作成を行ってしまうと行政書士法違反になるため、(作成は)無料であったり、(作成はせずに)支援であったりと上手いことやっています。※そういった案件が途中で頓挫しかけて私が引き継いだことがあり、契約内容含めて実情も把握しています。

しかし、私はそのことで行政書士法的にどうなのかとか、とやかく言うつもりはありません。一番の問題は、大型の認可保育園案件に対応できる行政書士が少なかったことにあると思っているからです。そして、今後も認可保育園案件が続くのならともかく、少子化の影響で新設案件は現に急激に減っているので、今更この業務について学ぼうとする同業者が出てこないのは仕方のないことだとも思っています。

そういう状況で私ができることと言えば、新人の行政書士が関わるチャンスがあるのであれば積極的に受けるようアドバイスし、場合によっては共同受任すること。そして、大型案件をゼロベースから手伝った経験のある現補助者さんが将来資格をとって独立するのであれば、同じレベルの仕事ができるようにノウハウを引き継げるようにしておくこと。といったことかと思っています。

認可や確認の変更手続きであったり、監査対応であったりと、既存園の行政手続きに関わる機会は数多くあるのですが、やはり新設認可申請の経験があるかどうかはとても大きいことだと思います。というのは、認可案件は、全てがスムーズに行くなんてことはなく(少なくとも私はそんな経験ありません)、想定外のトラブルのオンパレードです。それらを対処するノウハウは、変更手続きなどで想定外のことが起こったときに応用がきくケースが多いので、トラブル経験はあるに越したことはないと思っています。

私は10年間で10件以上の新設案件にせっかく携わらせていただいたのだから、その経験を活かしていけたらと考えています。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年7月8日

社会福祉法人の設立

ごくまれに、株式会社のお客様から「社会福祉法人を作りたい」とアバウトな相談を受けることがあります。

社会福祉法人は非営利法人ではあるものの、一般社団法人やNPO法人とは違い、作りたいからと言って作れるものではありません。大前提として、社会福祉法に定められている社会福祉事業を行うことを目的とする法人なので、社会福祉事業を既に実施していたり、ほぼ確実に実施できることが見込まれれる状態でないと認可されません。その社会福祉事業は公金(補助金)がないと回らないものばかりですので、公的機関からの信用がないとまず無理です。

そして、原則として社会福祉事業を行うための不動産を所有(賃貸借ではダメ)する見込みがあるか、施設が不要な場合は1億円以上の現金を寄附により保有できる状態である必要があります。(この時点で大抵の方は諦めます)

続いて人的要件として、理事6人以上、監事2名以上、評議員は理事の人数+1人以上(ちなみに評議員全員で構成される評議員会が理事の選任権を握っている)、その評議員を選任するための要員が少なくとも追加で2名ほど必要であり、理事と評議員(株主や社員に近いけど全然違う存在)は兼ねられないどころか、評議員には理事の親族すらなれないと聞いた時点で大抵相談は終わります。

資本を投下して事業で増やして儲かるという、ビジネスの常識から考えると何の意味があるの?と思ってしまうのは当然です。

先ほど社会福祉事業の実施が見込まれる必要があると記しましたが、認可保育園の一例を挙げると、行政の公募を通っていて、児童福祉審議会の承認を得て、なおかつ施設の建設費の補助金(数億円の補助金)の内示が出ていて、数千万円の自己負担分を持っているか、借入できることが確実(例:福祉医療機構の受理票が発行)といった要件が全て揃って「見込まれる」と判断される訳なので、確実に認可保育所を建設し、自己所有できる状態まで持っていって初めて社会福祉法人の設立認可が出るということなのです。

通常、最初の計画からここまでに1年半~2年はかかります。その間幾多の試練を乗り越えて、ようやく法人設立の認可申請ができるということなのです。

ちなみに、弊所では認可保育所の社会福祉法人しか扱いません。(一応小規模保育事業であっても定員10人以上であれば社会福祉事業に該当しますが、その事業単体で社福を設立する話は聞いたことがありません。)

その理由は、社会福祉法人の設立は、実施を予定している社会福祉事業の事業法(保育であれば児童福祉法や子ども・子育て支援法)とも密接な関係があり、その分野の専門的な書類作成が多数あるため、専門外の分野の法人には関与できないことをよく知っているからなのです。

高齢者福祉や障がい福祉関連事業者からのお問い合わせを一律でお断りしているのは、それが理由ですのでどうかご理解いただければと思います。

ちなみに社会福祉法人の設立は、どんな法人であってもドラマがあり、とても大変ですがやり甲斐のある仕事です。少子化の進行により、保育事業での社会福祉法人の設立は今後ますますなくなっていくことは避けられないでしょうけど、お話があれば喜んで伺いますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年6月18日