【改正私学法】校長(園長)の扱いについて|学校法人

特定行政書士|寺島朋弥

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寺島行政書士事務所ブログ

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【改正私学法】校長(園長)の扱いについて

今回の法改正では、校長(以下、私の専門分野的に「園長」とします)の学校法人役員(理事)としての扱いが大きく変わります。

現行法では、園長は「当然に」理事に就任することが法定されているので、特に選任手続きを経ることがなく、また園長である限りは任期もなく自動的に理事であり続ける仕組みになっています。

更に理事長の決め方は寄附行為で定めることになっており、園長が理事長になると寄附行為の中で定めることにより、改選手続き不要で半永久的に理事長の身分を維持することも可能でした。(この理屈で同様の体制の学校法人は役員変更(理事長重任)登記を長年行っていないと思います。)

ところが、改正法ではそうはいきません。改正法でも、理事の中に園長を含まなければならない(複数の学校を設定している法人は、そのいずれか1校以上の校長で可)という定めはあるのですが、あくまでも理事選任機関が選任する形になっている上、現行法にはない任期の上限(4年)が法定されていることにより、例え園長として選任された理事であっても任期があるということになります。

つまり、理事長兼園長先生であっても、任期(最長4年)ごとに改選の手続きが発生し、理事選任機関が拒否した場合は園長職までも失職することさえ法的(手続き的)にあり得ることになります。

これまでの私立学校法では、独裁的な運営もある程度許容されていたのですが、私立とは言え、私学助成や施設型給付費という「公金」を受領して運営している以上、ある程度の公の支配(親族等の関係者の就任が制限されている評議員会の決議を経る等)もあってしかるべきかと思うので、今回の改正は意味があることだと思います。

とはいえ社会福祉法人に比べたらまだまだ現経営陣が尊重される制度になっているので、後ろめたいことがなければ何も恐れる必要はないかと思います。強いていえば、これまでよりも経営陣の説明責任が大きくなるので、園児や保護者に喜ばれる園運営は当然のこと、経営陣の思い(運営方針等)を日頃から可視化する努力といったものがこれまで以上に求められることになるでしょう。

社会福祉法人制度改革の際も、このあたりのことは騒然としましたが、一部を除いて多くの法人では安定した経営陣で経営がなされています。当事務所では、ガバナンス全体の顧問業務も行っておりますので、ご不安がありましたらお気軽にご相談ください。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年8月2日

【改正私学法】現行役員等の任期について

学校法人制度改革について、どこも対応の真っ最中かと思います。

今回は理事・監事・評議員(以下「役員等」)の新制度移行期の任期について解説してみようと思います。

来年4月から改正法が施行されることになりますが、大前提として来年6月に行われる定時評議員会終結時までに、役員等のそれぞれの要件を満たしている人に統一する必要があります。言い換えれば、現時点で改正法の役員等の要件を満たしていない人は、来年の定時評議員会終結時点までに要件を満たさない限り、続けることができないということです。したがって、現在の役員等の全員が選任要件を満たしていることが前提となっていることをご承知おきください。

さて、法改正時の移行期は、様々な問題や矛盾点が発生するものですが、現行役員等の任期もその一つです。これまでの学校法人は、任期については寄附行為自治が認められており、無期限も有り得ましたが、改正法では寄附行為自治ではあるものの、法定上限があり、理事は4年、監事と評議員は6年が上限となり、その期間内で寄附行為で定めるのは自由ということになっています。個人的な感触では、上限ぎりぎりを定める法人が多いように思います。

そうなると、現在無期限であったり最近選任(重任)され、まだまだ任期が残ってる人がどういう扱いになるかということが問題になると思います。答えは、次のいずれか早い方までということになります。

  1. 現在の任期満了日
  2. 令和9年6月の定時評議員会終結の時

当然ですが、現在無期限の人は、2が適用されることになります。

以上が法令の解説というか、原則論です。しかし、これを原則どおり適用するだけで何も手を打たないでいると、法人によっては役員ごとに任期がバラバラになり、毎年のように選任手続きが必要な状態になってしまうケースがあるので要注意です。

そこで、そうなり得る場合に私が顧問先におすすめするのは任期調整です。簡単に言えば、最初の選任手続きが起こる時に、役員等全員に一度辞任していただき、あえて全員を改選することで任期を揃えることができます。正確には違いますが、強引に言えば解散総選挙みたいなイメージです。

しかし、こういったテクニックを使う場合は、何ヶ月も前から事前調整(根回し)が不可欠ですし、手続きの書類に一つでも問題(漏れや期限遅滞等)があれば、最悪の場合、後々法的に無効になることだってあり得るため十分な注意が必要です。ちょっと変わったことをやる場合は、まずは相談だけでもいいので専門家の知恵を借りることをおすすめします。

当事務所はこういった事案の対応経験は豊富で、相談だけでもお受けしておりますので(ただし本事案のような個別具体的なケースは初回から有料です)、お気軽にご連絡ください。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年7月19日

他士業連携

社会福祉法人や学校法人に関わっていると、毎年3~6月は他士業との連携が大切になってきます。

3月は翌年度の予算と当年度の最後の補正予算で公認会計士・税理士(会計事務所)さんと、そして新年度を前に就業規則の改定が行われることも多く、その場合は社労士さんと理事会の調整を行います。

4月に入ると当たり前ですが決算地獄。5月下旬の監事監査に向けて、GW返上で取り組んでいる会計事務所さんと様々な調整を行います。監事監査を無事に終えたら理事会の招集手続きに入りますが、並行して行政機関に提出する現況報告や各種調査書の作成をしつつ、資産総額変更や役員変更登記に向けて司法書士さんへ根回しもしておきます。

6月上旬は理事会での決算報告について、中旬はWAM NETの財務諸表等入力シートについて、下旬は評議員会での決算報告について…とにかく連日のように会計事務所さんとやり取りがあります。

そして4ヶ月間の激務の締めくくりは、司法書士さんに議事録やら財産目録を引き継いで登記してもらうこと。ここについては法人設立と同じですね。

法人顧問業務は、毎年同じ時期に同じ流れでこれらの仕事が発生しますが、同じ顧問先であっても内容が同じことはなく、毎年何らかのイレギュラーな事態が発生するものです。そして、その都度各専門家と連携しながら対処する訳ですが、これがなかなか楽しかったりします。

今年の繁忙期も終盤ではあるもののまだ終わっていないので安心はできませんが、日々楽しみながら取り組んでいこうと思います。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年6月12日

【改正私学法】特別利害関係者とは

来年4月施行の改正私学法では、役員等(理事・監事・評議員)の要件が細かく定められ、小規模の幼稚園が今回の制度改革によって一番お困りなのが親族等の「特別利害関係者」ではないでしょうか。

法律(改正私立学校法31条6項)で明記されているのは「配偶者」と「三親等以内の親族」と「その他省令で定めるもの」とありますが、現時点では本改正に係る省令がまだ公布されていませんが、パブリックコメント(意見公募)の案の時点では、以下が特別利害関係者にあたるとされていました。

  1. 事実婚である者
  2. 使用人である者(要するに役員等から雇われている者)
  3. 役員等から金銭を得て生計を維持している者
  4. 2と3の配偶者
  5. 1から3の三親等内の親族かつ同一生計者

個人的にはそれぞれ自活している同性パートナーはどうなるのだろうとか、いろいろ気になってしまいますが、本題から逸れるのでそれはまた別の機会に。(細かい突っ込みどころを議論したい専門家の先生大歓迎です!)

さて、元々親族経営が多い幼稚園の業界では、結構厳しく思われる条件ではないでしょうか。しかも、理事だけで考えても、最低の5人の場合はこういった関係者が他に1人もいてはいけません。(理事総数が6人の場合は本人と合わせて2人まで可:1/3ルール)

しかし、私学助成や施設型給付費の原資は公金(税金)であり、幼稚園であっても認定こども園であっても、運営費の多くを公金に頼ることになる以上、ガバナンスを強化することは必要なことと考えます。

正直なところ、社会福祉法人も7年前の制度改革の時はどうなることかと心配しましたが、何だかんだ言って経過措置の間にしっかりと対応し、遵法意識が高くなった法人が多いです。(今でも一部残念な事件はありますが…)しかし、私の周りでは、遵法意識が高い法人が運営する園ほど、定員充足率が高く、経営的にも潤っているところが多いのが事実です。

ぜひ、この制度改革を機に、より多くの学校法人幼稚園(認定こども園)がガバナンス強化に本気で取り組み、地域の子どもたちの利益になる園が日本中に増えることを願っています。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年6月5日

学校法人制度改革に関するお問合せについて

現在、日本語学校を始めとする「各種学校」から、学校法人制度改革に関するお問合せを数多くいただいております。しかし、当事務所は小規模事務所のため、同時に受任できる件数は僅かしかありません。

当分の間、学校法人制度改革(改正私学法対応)に関するご相談は、幼稚園・認定こども園の学校法人に限らせていただいておりますので、何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

同業者様へ

各種学校の今次制度改革に十分対応可能な同業者様がいらっしゃいましたら、お繋ぎしますのでお声がけいただけますと幸いです。

2024年5月22日

決算

社会福祉法人や学校法人といった公益系の法人の事業年度は4月から3月までなので、決算期は皆一緒です。

おまけに決算に基づいて法令に定められた手続きが多数発生するので、こういった法人ばかりを扱っている会計事務所さんは本当に大変そうです。だいたい皆さん、4~6月はほぼ休めず、代わりに夏は暇とおっしゃいます。

ちなみに弊所の顧問業務のうち主たる業務は、理事会や評議員会の招集通知・議案書・議事録等の書類作成、現況報告や法人・施設調書の作成ですので、決算が上がってきてからが大忙しです。とは言っても実際には4月から補助者さんが少しずつ準備を進めていて、書類の大枠はほとんど出来ていたりはするのですが――。

今週はまさに各法人さんの決算があがってくる週で、監事監査に向けて事業報告書の最終調製を行いつつ、理事会・評議員会で論点になりそうな部分の行政照会のとりまとめ等、事前の裏方業務の終盤といったところです。

そして、監事監査が終わり、理事会の招集通知を発したらいよいよ6月の出張祭りです。今年は何故か夜間対応が多く、プライベート(それこそ保育園のお迎え)や補助者さんの勤務も含めて、調整しないといけないことが多いのですが、6月を乗り切れば、いきなり行政指導監査が来ない限りは多少落ち着くので、なんとか頑張りたいと思います。

今年はもう取り扱える件数がいっぱいいっぱいですが、来年はもう少し受けられるよう、業務体制も整えていきたいものです。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年5月21日

業歴10年

行政書士歴満10年になりました。本日から11年目に入った訳です。

2014年の開業当初は、子ども・子育て支援新制度の施行まで1年を切っている時期で、各地で同制度周知のシンポジウムや勉強会が開催されており、私も様々な会合に参加していました。

その頃は残念なことに当時の新法・子ども・子育て支援法や認可の根拠である改正児童福祉法絡みの行政手続きを率先して取り扱うべき先輩行政書士の姿はお見受けすることができず、孤独な中、必死になって勉強していました。先輩行政書士にこの業務について相談しても、「保育分野は難易度が高いので個人事務所では無理だよ」と言われたものです。しかし、私は諦められず、絶対形にするという思いで勉強を続けて、幸いなことに1年目のうちに新制度の認可案件に恵まれることができました。当時のお客様とは今でもお付き合いがありますが、本当に感謝しています。

あれから10年が経ち、行政書士の中にもこの分野を取り扱う人が徐々に増えてまいりました。しかし、保育所や幼稚園の新設に伴う認可業務は、少子化が止まらない限りなくなっていくことは避けられません。したがって、今後は既存の施設が適法に運営しながら、保育方針・建学の精神の理念を実現できるように背後から経営陣を支えることが重要になってくると思っています。

今後ももちろん認可案件(各種変更や認定こども園化も含む)も積極的に取り扱ってまいりますが、社会福祉法人や学校法人のガバナンス支援に特に力を入れてまいる所存です。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年5月1日

【改正私学法】理事の選任方法

令和7年4月1日施行の改正私学法について、実務を進める中で思いついた時に気まぐれに書いてみようと思います。体系的に連載する予定はありませんのでご了承ください。

あくまでも私の見解ですが、幼稚園や認定こども園では評議員会を選任機関にしたらいいと思っています。他に考えられることとしては、理事選任・解任委員会のような機関を別に設置し、そこに委ねるといった方法もありますが、その機関を運営するための規則が必要になったり、委員の管理や会議を開催するための手続きが増えることになります。(ここではあえて書き(け)ませんが、そうすることによる経営陣にとってのメリットもデメリットも当然あります。)

しかし、どうしても小規模法人である幼稚園や認定こども園の場合、いろいろ小細工をして手続きを複雑化するよりも、ストレートに評議員会に委ねるのがいいと思うのです。他の機関を置いた場合でも、結局のところ評議員会の関与(諮問)は必要ですので、それならば建学の精神に共感してくれる信頼できる評議員を集めて、その方たちに委ねるという形が健全ではないでしょうか。

ちなみに私は保育所や認定こども園を運営する社会福祉法人とのお付き合いが多く、2017年の制度改革の際にも関与していますが、社会福祉法人の場合は理事・監事の選任・解任権限は評議員会と法定されているため、動かしようがないのですが、少なくとも私が関与しているところは健全な運営ができているところばかりです。

中には評議員会で評議員が理事長を含む理事に対して意見・注文を付けるような場面もありますが、子どもたちの最善の利益を追究するという共通の目的がある限り、それは健全な議論であり、対立関係ではありません。これからの学校法人は、現在の社会福祉法人と同様に、理事が自分たちの教育・保育方針(もちろん収支も大事ですが…)について自信を持って評議員会に説明し、それを理解していただくことで身分を保証(理事に選任される・解任されない)してもらうという形を作っていくべきではないでしょうか。

最後はほとんど私の個人的な思いになってしまい恐縮ですが、各法人の寄附行為作成に向けての参考にしていただければ幸いです。

なお、類似の懸案事項として、評議員の選任・解任はどうするのかというのがあるかと思います。この点についても社会福祉法人制度も参考にはなりますが(とはいえあちらもこの点は定款自治の範囲)、学校法人ならではの設計ができると思っており、とても興味深く思っているところです。また気が向いたら事例や考え方をまとめて書いてみたいと思っています。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年4月24日

改正私立学校法

改正私立学校法(以下「私学法」)の施行まで1年を切りました。今回の私学法改正は、学校法人のガバナンス強化ということで、社会福祉法人にだいぶ近い形になります。(近いだけでかなり違いがあるのも事実です。)

今回の改正でおそらく一番大変と思われる点は、理事・監事・評議員の間や中で、親族等の特別利害関係者の数に制限ができるため、「他人」を集めないといけない法人が続出することかと思われます。特に幼稚園単体を経営されている学校法人は、多くがそうなるのではと思っているところです。

もちろん法人の規模に応じて、2年ないし3年の経過措置があるものの、令和9年度の定時評議員会までには全ての学校法人が新制度に対応することが求められます。

なお、経過措置があるのは、主に構成員についての部分ですので、寄附行為やそれに関連する規則の改定は、今年度中に行わねばなりません。特に寄附行為の変更は所轄庁の認可が必要ですので、そろそろ検討を始めたほうがいい時期でしょう。

ちなみに私は前回の社会福祉法人の制度改革の過渡期に、ちょうど社会福祉法人の案件があり、試行錯誤しながら新制度に対応した規程を作成した経験があります。かなり大変でしたが、今となってはいい経験ができたと思っています。今回の学校法人の制度改革でも、どこかの法人さんのお手伝いができればいいなと思っていますが、どうしても件数には限りがありますので、不安な法人さんはお早めにご相談いただければと思っております。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年4月16日

事業報告書

現在、うちの事務所で一番大変な作業は、お客様の事業計画書の原案作成。

年明けから令和6年度の事業計画書の作成が始まり、3月の理事会で承認されたら休む間もなく令和5年度の事業報告書に取り掛かります。これは多くの法人で5月下旬に行われる監事監査会に間に合わせる必要があるため、意外と時間がありません。

顧問先であれば、本部拠点や大きな契約関係は把握しているので、まずはその辺りを概ね仕上げて、園特有の行事等についてお客様に下書きを書いていただくことになりますが、ベースとなるものがないとお客様もどこから手を付けたらいいか分からないため、とにかく毎年4月の2週で原案を作ってしまうのです。

また、私が普段から保育のことを勉強している理由の一つはこういった事業計画書・事業報告書の作成に役立つからというのもある訳で、個人的にも楽しい業務でもあります。

ちなみにこれらの業務は、予算・決算と連動するので、会計事務所との連携も欠かせません。そして、6月のスケジュール(評議員会の日程や理事長改選の有無等)によっては、司法書士さんにも事前に根回しが必要だったり、幅広い視野をもってコーディネートしていく必要があります。これらは許認可業務で行政書士に一番求められている部分でもあり、得意でなければならないスキルなので、大いに励んでまいります。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年4月3日