【改正私学法】年度末評議員会・理事会について|私立学校法

特定行政書士|寺島朋弥

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寺島行政書士事務所ブログ

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【改正私学法】年度末評議員会・理事会について

学校法人はそろそろ来年度の事業計画・予算の承認に向けて、年度末の評議員会や理事会の準備を始める頃と思います。特に今回は、改正私学法による新寄附行為が施行される直前の評議員会・理事会ということで、注意すべきことがあり、入念に準備をしないといけません。

予算を含む、法改正(学校法人会計基準含む)に伴う会計・経理に関する部分は、顧問の会計事務所さんが相談に乗ってくれると思いますが、ガバナンスに関する部分は法人自身で意識しないといけないこともあるため注意が必要です。今回はこの度の寄附行為変更に伴い、注意すべき2点について記しておきます。

評議員報酬の基準策定

今回の改正私学法では評議員の報酬基準を策定することが義務付けられています。昨年お問い合わせのあったお客様は、令和元年の私学法改正対応で、役員(理事・監事)の報酬基準を策定する際に評議員もまとめて入れておいたため、今回は対応不要といったケースが多かったのですが、中には役員のことしか触れられておらず、評議員については無策定のところもありました。その場合は必ず今年4月1日までに「評議員の報酬基準」を策定・施行しなければならず、そのためには今回の評議員会・理事会の議案にする必要があります。

実務としては、役員報酬規程は既にあるはずですので、タイトルを「役員・評議員報酬規程」など評議員を含む形に変更した上で、内部に評議員に関する規定を盛り込むことになろうかと思います。(評議員は役員ではないため区別されます。)

評議員選任・解任方法に関する細則

各都道府県の寄附行為作成例を見てみると、評議員の選任や解任方法についておおざっぱに定めた上で必要な事項は「評議員選任・解任規程において定める」と規定されているものが見受けられます。こういった規程を委任規程というのですが、寄附行為から具体的な名称を定められている以上、その通りの名称の規程を準備する必要があります。当然、名称だけでなく、具体的な選任方法、解任方法を条文形式で作成していく必要があり、これは私立学校法ではなく、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律を熟知していないと有効な形で作成するのはなかなか困難だと思うので、都道府県がモデル規程を用意してくれないようであれば我々専門家に依頼するのが確実かと思います。(今からの依頼で間に合うかは別問題ですが…)

まずは新しい寄附行為の33条前後にある評議員選任に関する規定をよく見直し、別の規程に委任されていないかを確認し、委任されている場合は必ず4月1日までに「評議員選任・解任規程」を施行しなければならないため、今回の評議員会・理事会の議案にする必要があります。

とりあえず今日の記事では上記の2点に触れましたが、この他にも評議員の損害賠償責任対応やら現行の役員等の構成によっては早速大きく動かないといけない場合もありますので、そろそろ具体的に検討していかないと時間的に厳しくなってくると思います。

寄附行為変更認可申請でご依頼をいただいていた法人様にはこの辺りも含めて対応させていただいておりますが、ご自身で手引き等を参照しながら対応された方は、案外広範囲に影響が及びますのでくれぐれもご注意ください。

特定行政書士 寺島朋弥

スポットのご依頼について

年度末の評議員会・理事会対応については、顧問契約をいただいている法人様で手一杯となっているため、スポットでの対応は難しい状況です。しかし、「評議員報酬は無償」とか「評議員選任・解任方法はできるだけ簡易迅速に対応できるようにしたい」といったご要望で、招集通知や議事録を含まない「議案として乗せるための案」を作成することは対応できる場合もあります。お困りの場合はご相談ください。

2025年2月18日

寄附行為変更認可後のこと

改正私学法施行に伴う寄附行為変更認可申請ですが、申請期限が早かった県から徐々に認可が出始めております。

しかし、認可が出たからといって安心できないのが今回の改正です。評議員の報酬に関する定めや、評議員の選任・解任方法に関する具体的な定めを寄附行為に入れていない場合、別に細則を用意する必要があったりするので要注意です。

これらの細則は、寄附行為からの委任規程という形であれば基本的に行政手続は発生しないので、理事会だけで制定できることが多いため、3月の事業計画・予算承認理事会に合わせて決議するのがいいでしょう。とはいえ、3月の理事会は現行(旧)寄附行為に基づく理事会であり、細則の施行は新寄附行為が発効する4月1日になるのが通常でしょうから、理事に異動がある場合等、気をつけないといけないポイントはいくつかあるので要注意です。

正直、3月は社会福祉法人の対応で手一杯なため、実務的なサポートは難しいと思いますが、オンライン相談(有料)といった対応は可能ですので、これらの手続きでお困りの学校法人(幼稚園・認定こども園に限る)さんはまずはご相談ください。

それにしても、準備期間(文科省サイト等での事前勉強)を含めると3年越しくらいの私立学校法改正でしたので、いよいよ施行かと感慨深いものがあります。法の趣旨が実現されるように、今後も学校法人さんのガバナンスを支援していけたらと思っているところです。

特定行政書士 寺島朋弥

2025年1月22日

寄附行為変更(相談)について

現在、多くの都道府県で寄附行為変更認可申請の手続きが進んでいるかと思います。

当事務所には都道府県の事前チェックの段階で「行政の言ってることが難しくて分からない」といったご相談をいただくことが多いです。

通常は行政との交渉込みの認可申請代理という丸投げプランでご案内しているところですが、できるだけ自分たちで進めたいという法人のために、事前チェックと相談のみのプランをご用意しました。

  • 寄附行為変更事前チェック(全体の条文チェックとリスク等の助言) 33,000円(税込)
  • 相談(電話1時間+電話内容に関するメール2往復) 16,500円(税込)

いずれも丸投げプランでご依頼いただいているお客様とのバランスの関係上、具体的な条文案を示す手前の段階までのアドバイスになり、行政との交渉などは含まれておりません。

ぜひお気軽にご相談ください。

※本サービスは幼稚園・認定こども園限定です。

2024年9月6日

【改正私学法】情報公表義務について

今回の法改正で、全ての学校法人が計算書類(決算書)等をインターネットで公表しないといけなくなると誤解されている方が案外いらっしゃるようです。

確かに新法151条には寄附行為や計算書類、財産目録等の公表義務の規定がありますが、これはあくまでも大臣所轄学校法人等(大臣所轄法人と一定規模以上の知事所轄法人=幼稚園単体の場合はまず該当しない)の義務であり、幼稚園単体のような知事所轄学校法人に対する義務ではありません。

そして新法137条のほうにも寄附行為や計算書類等のインターネット等での公表の規定があり、こちらは全ての学校法人が対象ですが、条文の結びが「公表するよう努めなければならない」となっており、これは努力義務と言い、公表の義務ではなく、公表する努力をすることが義務なのです。

※法律の建付上は、努力義務が原則で、大臣所轄学校法人等は特例で義務という形になっています。

細かいことのようですが、法律の世界、特に行政法界隈では、義務努力義務の違いは大きく、明確に区別されています。

ところが、文部科学省が出している寄附行為作成例では、知事所轄学校法人向けのものでもここに関する規定(作成例69条)が公表義務になっているのです。そして、各都道府県の作成例もそれに倣っているため、多くの人が法律の条文ではなく、寄附行為作成例を見て、義務化されたと勘違いされているようです。

問題はいくら法律で努力義務となっていても、寄附行為で義務と規定してしまうと、本当に義務になってしまう点です。この場合、公表しないと法律違反ではなくても、寄附行為違反となり、執行部の責任を問われたり、行政指導の対象になったりし得ます。

私は別に義務ではなく努力義務なのだから公表する必要なんかないと言いたい訳ではありません。私学助成といった補助金をベースに運営されている訳だから、むしろ公表するのが自然かと思っています。(実際、社会福祉法人はどんなに規模が小さい法人でも定款や計算書類等は丸見えですし!)

しかし、法律殊に行政法の実務家として、法律で義務化されていないことを、寄附行為でこっそりと義務化(一般の事務職員だけで対応している法人さんの多くは気づかないと思います。)させるような行政の動きに違和感を覚えてこの記事を書いた次第です。

実は今回の寄附行為変更(作成例)は、これだけに限らず、結構落とし穴があります。まだ時間はありますので、じっくりと見直されることをおすすめします。

また、有料とはなりますが、寄附行為変更案のチェックや相談だけでも受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。(今月は本件に関する業務が立て込んでおりますので、多少お待ちいただく場合がございます。)

特定行政書士 寺島朋弥

理想(建前)と現実

福祉や教育といった、公共政策に近い業界の法律を扱う業務を遂行する上で、常に意識しなければならないのが理想(建前)と現実のバランスです。

現在は令和7年度施行の改正私立学校法への対応準備で、お客様や事務所スタッフ、関係する専門家と毎日のように意見交換する機会が多く、そのことを特に感じる日々です。

役員を選任したり、監督したり、解任したりといったガバナンス部分はもちろんのこと、日々の運営においても、外部業者と契約(工事に限らず物品購入であっても)するときは入札が必要な場合もあり、基準を定めるときはそのバランス感覚が求められるのです。

こういった公共色が強い業界の収益源は、多くが公金です。理事会等でこの辺りの話が出る際には、監事さんが専門家の場合、憲法論(89条公の支配論)で議論になることが多いですが、多くの公金が使われている以上、公の支配(言ってみれば市民による監視)に属する必要があるという理屈は正当と言える訳です。

しかし、法律で掲げられた理想(建前)と、現場での現実は、必ずしも一致せず、法律により委ねられた自治権(定款や寄附行為で決められる裁量のある部分)を最大限に活用し、調整を図る必要があります。

ところが、規程整備の際、行政機関や社会福祉協議会が出しているようなモデル規程(定款や寄附行為含む。)をそのまま踏襲すると、理想に偏り過ぎるガバナンス体制が構築されてしまう危険?があります。つまり、現実を把握した上で、法の範囲で絶妙なバランスが取れる体制を構築する必要があるのです。

その意味では、私が今年度時々書いている改正私学法に関するブログ記事も、正直理想論に偏っています。理由は、現実は現場(お客様)によって違うため、一概には言えないことと、専門家という立場上、理想からあえて離れるようなことを公の場で発言する訳にもいかないためです。

当然、お客様からの依頼に基づき、業務として進める際は、ブログでは書いていないようなことを沢山提案することになりますが、そここそがお客様が一番求めている部分かと思っています。

今、全国の学校法人がおかれている状況は、非常に面倒くさいと思われるかもしれませんが、理想と現実のバランスを整えるチャンスだと捉えるのがよろしいかと思います。この夏から冬にかけて、手続きが本当に大変だと思います。私が直接お手伝いできるのは、幼稚園か認定こども園の学校法人に限らせていただいておりますが、私立学校法という、根拠法が同じである全ての学校法人の実務を行う人たちを同志だと思って心から応援しています。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年8月3日

【改正私学法】現行役員等の任期について

学校法人制度改革について、どこも対応の真っ最中かと思います。

今回は理事・監事・評議員(以下「役員等」)の新制度移行期の任期について解説してみようと思います。

来年4月から改正法が施行されることになりますが、大前提として来年6月に行われる定時評議員会終結時までに、役員等のそれぞれの要件を満たしている人に統一する必要があります。言い換えれば、現時点で改正法の役員等の要件を満たしていない人は、来年の定時評議員会終結時点までに要件を満たさない限り、続けることができないということです。したがって、現在の役員等の全員が選任要件を満たしていることが前提となっていることをご承知おきください。

さて、法改正時の移行期は、様々な問題や矛盾点が発生するものですが、現行役員等の任期もその一つです。これまでの学校法人は、任期については寄附行為自治が認められており、無期限も有り得ましたが、改正法では寄附行為自治ではあるものの、法定上限があり、理事は4年、監事と評議員は6年が上限となり、その期間内で寄附行為で定めるのは自由ということになっています。個人的な感触では、上限ぎりぎりを定める法人が多いように思います。

そうなると、現在無期限であったり最近選任(重任)され、まだまだ任期が残ってる人がどういう扱いになるかということが問題になると思います。答えは、次のいずれか早い方までということになります。

  1. 現在の任期満了日
  2. 令和9年6月の定時評議員会終結の時

当然ですが、現在無期限の人は、2が適用されることになります。

以上が法令の解説というか、原則論です。しかし、これを原則どおり適用するだけで何も手を打たないでいると、法人によっては役員ごとに任期がバラバラになり、毎年のように選任手続きが必要な状態になってしまうケースがあるので要注意です。

そこで、そうなり得る場合に私が顧問先におすすめするのは任期調整です。簡単に言えば、最初の選任手続きが起こる時に、役員等全員に一度辞任していただき、あえて全員を改選することで任期を揃えることができます。正確には違いますが、強引に言えば解散総選挙みたいなイメージです。

しかし、こういったテクニックを使う場合は、何ヶ月も前から事前調整(根回し)が不可欠ですし、手続きの書類に一つでも問題(漏れや期限遅滞等)があれば、最悪の場合、後々法的に無効になることだってあり得るため十分な注意が必要です。ちょっと変わったことをやる場合は、まずは相談だけでもいいので専門家の知恵を借りることをおすすめします。

当事務所はこういった事案の対応経験は豊富で、相談だけでもお受けしておりますので(ただし本事案のような個別具体的なケースは初回から有料です)、お気軽にご連絡ください。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年7月19日

学校法人制度改革に関するお問合せについて

現在、日本語学校を始めとする「各種学校」から、学校法人制度改革に関するお問合せを数多くいただいております。しかし、当事務所は小規模事務所のため、同時に受任できる件数は僅かしかありません。

当分の間、学校法人制度改革(改正私学法対応)に関するご相談は、幼稚園・認定こども園の学校法人に限らせていただいておりますので、何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

同業者様へ

各種学校の今次制度改革に十分対応可能な同業者様がいらっしゃいましたら、お繋ぎしますのでお声がけいただけますと幸いです。

2024年5月22日

【改正私学法】理事の選任方法

令和7年4月1日施行の改正私学法について、実務を進める中で思いついた時に気まぐれに書いてみようと思います。体系的に連載する予定はありませんのでご了承ください。

あくまでも私の見解ですが、幼稚園や認定こども園では評議員会を選任機関にしたらいいと思っています。他に考えられることとしては、理事選任・解任委員会のような機関を別に設置し、そこに委ねるといった方法もありますが、その機関を運営するための規則が必要になったり、委員の管理や会議を開催するための手続きが増えることになります。(ここではあえて書き(け)ませんが、そうすることによる経営陣にとってのメリットもデメリットも当然あります。)

しかし、どうしても小規模法人である幼稚園や認定こども園の場合、いろいろ小細工をして手続きを複雑化するよりも、ストレートに評議員会に委ねるのがいいと思うのです。他の機関を置いた場合でも、結局のところ評議員会の関与(諮問)は必要ですので、それならば建学の精神に共感してくれる信頼できる評議員を集めて、その方たちに委ねるという形が健全ではないでしょうか。

ちなみに私は保育所や認定こども園を運営する社会福祉法人とのお付き合いが多く、2017年の制度改革の際にも関与していますが、社会福祉法人の場合は理事・監事の選任・解任権限は評議員会と法定されているため、動かしようがないのですが、少なくとも私が関与しているところは健全な運営ができているところばかりです。

中には評議員会で評議員が理事長を含む理事に対して意見・注文を付けるような場面もありますが、子どもたちの最善の利益を追究するという共通の目的がある限り、それは健全な議論であり、対立関係ではありません。これからの学校法人は、現在の社会福祉法人と同様に、理事が自分たちの教育・保育方針(もちろん収支も大事ですが…)について自信を持って評議員会に説明し、それを理解していただくことで身分を保証(理事に選任される・解任されない)してもらうという形を作っていくべきではないでしょうか。

最後はほとんど私の個人的な思いになってしまい恐縮ですが、各法人の寄附行為作成に向けての参考にしていただければ幸いです。

なお、類似の懸案事項として、評議員の選任・解任はどうするのかというのがあるかと思います。この点についても社会福祉法人制度も参考にはなりますが(とはいえあちらもこの点は定款自治の範囲)、学校法人ならではの設計ができると思っており、とても興味深く思っているところです。また気が向いたら事例や考え方をまとめて書いてみたいと思っています。

特定行政書士 寺島朋弥

2024年4月24日